ドライバーもご満悦！
｢ノンアルペアリング｣のある店で至福のときを

ゴルフ時のドライバーはなにかと忍耐のいる役回りだ。
朝はピックアップのために誰よりも早く起床。帰りだって、うっかり渋滞に巻き込まれれば、気づくと自分以外は爆睡…。そして打ち上げでは、周りが酔っていくのを横目にノンアルコールビールで乾杯……。

当然、今日もそのパターンだと思っていたのだが。

社会人になってから出会った3人は、年齢も職種も育ってきた環境すら異なるが、“旨いと思う店が同じ”で意気投合。たまたま全員、ゴルフが好きという共通点があったことも大きい。

この1年ほどは、月1回のラウンド＆ディナーが定例化。
ゴルフと胃袋でつながると、人間はここまで絆が深まるのかと思うほど、今では欠かすことのできない稀有な同志になった。

店選びの幹事は持ち回り。今夜は敏腕PR女子に連れられ、恵比寿のとあるオートロックマンションへ。201とインターフォンを押し、予約名を告げるとドアがオープン。秘密の隠れ家感たっぷりのアプローチに、店選びにうるさい面々も期待感を隠せない。

一歩足を踏み入れ驚いたのは、その圧倒的な開放感。アンティーク調の家具にグリーンが配され、まるでクラブメンバー専用のサロンのよう。

店を選んだPR女子いわく、「食事はおまかせコースで、日本酒とイタリアンのペアリングが最高なの！」。日本酒のレパートリーは、100種類にも及ぶと聞き、3人の目は輝く。

だが残念ながら、自分は飲めないわけで…。
嘆息したところで、彼女がひと言。「いつもドライバーで飲めないでしょ？　だから、少しでも楽しんでもらえるよう、ノンアルコールペアリングがある店にしたのよ」。

想像もしていなかったセリフに驚いていると、ひと皿目が登場した。

パルミジャーノがたっぷりと振りかけられた生ハムとホワイトアスパラガスの前菜、生ウニとキャビアをふんだんに使ったクリームタリアテッレと続く。

３人は日本酒とのマリアージュを楽しんでいるが、自分にもひと皿ごとにぴったりのノンアルコールドリンクが供されるので、疎外感は皆無。
むしろ、普段は酔いがまわると鈍くなる舌が研ぎ澄まされ、いつも以上に旨味を感じられることに驚く。

そして満を持して運ばれてきたのは、黒毛和牛のステーキだ。

周りが赤ワインと楽しむ中、自分に供されたのはなんと、ほうじ茶！　
「お茶の中ではフルボディといえるほど、しっかりとしたコクがあり、香りもスパイシーで合うんです」とシェフ。

言われてみればその通り。肉の旨みとほうじ茶特有の香ばしさが絡み合う感覚は、初めての体験。

最後のデザート、「レアチーズ、バニラとベルガモットのクレマカタラ、はじけるパッションフルーツ添え」までぺろりと平らげ、今宵の打ち上げは終了。

旬の食材を使い、毎月メニューは変わると聞き、「来月もここにしようよ、ノンアルペアリング最高だし！」とつぶやいた途端、「じゃあ次回もドライバー、よろしくね」との返しが。

ま、それもいいかな…そんな風にすら思える一軒だった。